ボイストレーナーが赤ペン先生になったよ
今月から、アプリを使った動画添削型のオンラインレッスンを始めました。
いま、他県に住む小学生にボーカルのレッスンをしています。
アプリのレッスンは、ボイトレ界の赤ペン先生のようなものです。
私は小学1年生から6年間、進研ゼミを受講していたのですが、その講座の中でも赤ペン先生の添削を楽しみにしていました。
この講座では、毎月「チャレンジ」という教材が届いて、自習し、提出用の解答用紙を郵送してしばらく待つと赤ペン先生の添削と解説が書かれた答案が返ってきました。
手書きで私一人だけにあてたコメント付きで返してくれるので、毎回どんなコメントが書かれてくるのだろう? と楽しみに待っていた記憶があります。
自習用の教材は手をつけたりつけなかったり、読まないまま積読状態にしていたことも多かったのですが、赤ペン先生への課題提出は割と真面目に行っていました。
アプリのレッスンもこの形に近いです。
ボーカルの場合、まず練習用のカリキュラムが動画で送られてきます。
生徒はその動画を見て、自宅で自主練習をします。
そして生徒は、週1回、基礎練習と課題曲の歌唱動画を作成し、提出します。
数時間~数日待つと、提出した動画に先生の赤ペンやコメントが入った動画が返送されてきます。
生徒はそれを参考に練習し、また翌週、新しい動画を作成し、提出をします。
そして、数週間~ひと月くらいで、新しいカリキュラム動画が送られてくるので、次はその練習に移る、という流れになっています。
このレッスンでは、先生は、生徒の提出する一つずつの動画に対して、それぞれ添削動画を作っていくので、その子だけのオリジナル動画が返ってくるという形になっています。
子供の頃、赤ペン先生のコメントを楽しみに待っていた私のように、生徒はこの添削動画を楽しみにしてくれているようです。
対面やライブでやりとりできるオンラインレッスンにもメリットはたくさんありますが、今回はアプリのレッスンの良さを挙げていきます。
まず、解答用紙と同じく動画が記録として残る、ということです。
音楽は蛇口をひねったら流れ続ける水のように、そのままでは形に残らないので、それを受け止める器が必要になります。
でも、練習をしているだけだと、無意識で水を垂れ流しにしているだけになっていることも多く、自分の演奏を客観視しにくくなります。
意識して器を用意する習慣をつけられれば良いのですが、水を流しているだけで満足し、それに飽きると蛇口すらひねろうとしなくなる子供も多いです。
そこで、アプリレッスンで動画という器を用意する習慣をつけることで、生徒は自分の流した水の色や味や温度や手触りを客観的に受け止めることができます。
次に、自学自習の習慣がつきやすいということです。
赤ペン先生の添削と同じように、このレッスンは生徒から提出された動画をもとに添削を行っていきます。
写真に自分が撮られるとき、多くの人は無意識にキメ顔をつくろうとしますよね。
それと同じで、提出動画を作るときは、生徒は無意識のうちにより良い動画を作ろうとします。
それを作るため参考になるのが、送られてきたカリキュラム動画や前回の先生の添削動画。
先生から送られたヒントを手掛かりに、生徒は主体的により良い動画を作るための練習をし、撮影にチャレンジすることができます。
最後に、赤ペン先生の添削と同じように、適切な距離感を保ったレッスンが出来るということです。
赤ペン先生の一番の良さは、「会えないこと」「顔が見えないこと」だったように感じています。
これらはデメリットのようにとらえられることも多いですが、それがプラスに働く子供もいます。
子供たちは解答用紙に書かれた赤ペン先生の文字やコメントという少ない情報の中から、理想の赤ペン先生を好き勝手に想像しています。
面白い小説の実写化が難しいように、そういう子供たちが実際に赤ペン先生に会っていたら、自分で作り上げた赤ペン先生のイメージとのギャップに幻滅していたかもしれません。
アプリのレッスンは、ライブ面談で先生と直接テレビ電話をする時間もあり、カリキュラム動画にも先生が映っているため、赤ペン先生より先生の体温は高めですが、それでも「携帯越し」という壁があります。
対面やライブのオンラインレッスンより、はるかに先生の情報は少なくなります。
これは、子供たちに「先生はどういう人なんだろう?」と想像させる余白がたくさんあることにもつながります。
携帯の中の先生を、勝手に理想化してくれるので、対面レッスンのように甘えや慣れすぎることがなくなり、親や身近な人からのアドバイスよりも素直にフィードバックを受け入れやすくなります。
これらが、今、私が感じているアプリの動画添削型レッスンのメリットです。
コロナの影響もあり、最近は対面よりオンラインのレッスンの需要が増えてきました。
オンラインレッスンの中の一つの選択肢として、アプリのレッスンにチャレンジしてみるのも面白いと思います。