Poco a poco

元音楽療法士、現音楽講師の音楽考。

眠りから覚める日は突然に

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最近、編み物にはまっています。はまりだして3日目です。

超初心者向けのキットを購入して、めちゃくちゃ親切な説明書を見ながら、ガーター編みをひたすら練習しています。

いつまで続くかは謎ですが、今のところの心境は

「100年の眠りから覚めたオーロラ姫になった気分」です。

 

少し、私の編み物遍歴を説明しようと思います。

私の母は編み物が得意で、よく自作のセーターを着ていました。

それを見て、小学2年生の冬、「私も編み物がしたい!」と母に頼むと、母は喜んで赤い毛糸と棒針を用意してくれました。母にガーター編みを習って、マフラーを編み始めたのですが……。

母は親切なことに、左利きの私のためにわざわざ左右逆の編み方を教えてくれたんですね。小学生ですから、編み目が増えたり減ったり揃わなかったり。編み続けるにつれてどんどん不格好になっていくマフラーを見て、嫌になり、編み途中のままほっぽりだして早数十年。

それ以来、周りがどれだけ編み物にはまろうとも、自分は手を出さないというスタンスを貫いてきました。

 

子供のうちは、うまくできないとか飽きやすいとか興味が移ろいやすいとかで、すぐ手を出して辞めることってたくさんあると思います。

でも、私にかけられた呪いは

「左利きは編み方が変わるし、編み図も左右逆に見なきゃいけないから難しい」

でした。

この言葉は母に最初に言われたことなんですが、この思い込みという名の呪いは厄介でした。

実際、私に教えている時の母はとても難しそうに編んでいました。(今考えると、右利きの母が、左効き用に合わせて編んでいるのだから、難しくて当然なのですが。)

小学2年生での挫折以来、私は「左利きだから」という免罪符を持って、堂々と編み物を避ける人生を送ってきたのでした。

 

呪いが解ける日は突然やってきました。

「自分の服が作りたいけど面倒くさい。マフラーとか小物なら出来そうだけど、編み物自体が無理ゲーだよねぇ」と漠然と考えていた1週間前。

ふと立ち寄った本屋で私はついに王子に出会ったのです! 

 

手に取ったカタログの中で見つけたのは、「編み物初心者向け手取り足取りキット」という、棒針も閉じ針も毛糸も動画付き説明書も全て送ってくれる、至れり尽くせり感溢れる優良物件。編み物教室に通うよりお財布にも優しい。最高か。

「これなら出来るかも!」と深く考えずに購入し、説明書を見て「ああ、しまった。左利きだから逆なんだった」と思ったその瞬間。

「いや、別に左利きでも右手が全く使えないわけじゃないし、ピアノとか右手の方が動くし、説明書めちゃくちゃわかりやすいし、この通りにやればできるんじゃない?」

という心の声が、どこかからか聞こえてきました。

 

早速、説明書通りに編んでみました。

最初はぎこちなかった右手の動きも、覚えて慣れてくるとだんだんスムーズに動くようになってきました。子供の頃は編み目が増えたり減ったりしていた理由がよくわからなかったのですが、この親切なキットにはその理由まで詳しく解説されています。

きれいに編むために気をつけるポイントまで丁寧に教えてくれているおかげで、どんどん上達しているように見えます。というか、素人にしては普通に上手く編めている気がします。左利きなのに。

 

結果、「編み物ってこんなに楽しかったんだ! 今まで避けてきた人生は何だったんだろう?」という心境に、今、至っています。

 

私は、去年まで高齢者と関わる仕事をしていたのですが、高齢者にも編み物ってすごく人気が高いんですよね。

一日中編み物をしている方も多く、自作のセーターやマフラーは当たり前。他の人が作った作品にも興味深々。ハイペースで仕上がっていく新作たち。

当時は、何がそんなに面白いのか、なんでそんなに長時間編み続けられるのか、その情熱はどこから来るのか、すごく謎だったのですが、実際に出来るようになると、その魅力がよくわかります。

 

編み物に関しては、私は小学2年生の時の記憶のまま時が止まっていました。

自分が苦手と思い込んでいたり、難しいと思ってやらなかったりしていることの中には、大人になった今なら簡単に出来ることがまだまだたくさんあるように思います。

今は大人向け、初心者向けの趣味の講座やレッスンもたくさんあり、対面だけでなくオンラインや通信講座などさまざまな形で学ぶことができます。新しいことを始めたり、昔挫折したことに再挑戦したりするハードルはすごく下がっているように思います。

自分の眠っていた能力を目覚めさせることができるのも、大人ならではの楽しみだと思います。今だから出来ること、今だからやりたいことをその都度、深く味わい、楽しんでいきたいと思います。